Schreckwürmer
日本人が100m走を9秒台で走り抜いた同じ月にSchreckwürmerは120分のワンマンを行なった。
僕は始め嘘だろうと思っていた。Schreckwürmerはライブそのものが1曲というか1作品のバンドだ。しかもブラストと言うのか、ジャンルで言うと陳腐になってしまうが「最速」だ。とてもじゃないが、ドラムのIronFist辰嶋さんとて人間だ。肉体的に乳酸が持つ訳がない。ゲストも7人と二万電圧のサイトに書いてあるからきっと2〜3曲に分けるのだろうと思っていた。
だが、この予想は始まって2秒で直感的に思い違いと感じさせられた。
(この空気、やる気だ)
たった3回目で感想を書くのもおこがましいが書かずにはいられない。誰でもいい、伝えたい。読まれなくてもいい、僕が僕のために今の感情を残しておきたいのだ。
僕は伝えたい。
ここにいる全ての人は完全に打ちのめされたし、歴史の証人になったと言えるだろう。
音は何を意味するのか?
あくまでも個人的な感想だが、Schreckwürmerを体感する時、始めは耳、「聴覚」で音を感じようとする。それは音源であってもライブであっても同じだろう。音を楽しむと書いて音楽だからだ。しかし次に待っているのはビリビリとした音の波動からそれを肌で感じる。「触覚」で音を味合わせられる。
ここに来ると酒を飲んでいなくても若干カラダ全体が高揚して来るのが分かる。
しかしながらSchreckwürmerの凄さはここから始まるのだ。
音の波動、電子的なノイズ、内臓をえぐるようなベースの音にゲストが斬り入れてくれるギターからの音、そこに辰嶋さんのドラム。ここに自然と目をつぶってしまうのだ。つまり「視覚」をも奪われる。見ないことで観る、もうこれは暴力に近い。そんなすべての表現が陳腐に思える。
あえてここでレビュー的な感想は終えることにする。すべての説明はこのSchreckwürmerのワンマンという最速で最高の作品に評価をつけてしまうような愚行に思えるからだ。
ひとつだけ言えることは、日本人が初めて100m走で9秒台を記録した同じ月にSchreckwürmerは120分というワンマンを行なった。
感動と畏怖が同列しうることを知った日となった。