Beginning to End.-002

Beginning to End.-002

  1. 機動戦士ガンダム・パラレルストーリー
    【Beginning to End】

第1章 第2話「ムンゾ」


 

「その噂はやはり本当か・・・」

「はっ!軌道上の衛生ハッキングでの実写映像なのでまず間違いないかと思います!」

「まだ地球は支配する欲望から目が覚めないとはな。
わかったギズル!引き続き監視を怠るな!
私は開発ルームに行って来る!」

「ハッ!」


 

上官とされるその男は仮面を付けていた。そして赤の軍服。

身体には肉体を押さえつけるいくつものプロテクターが装着されていた。見渡すと他の軍人らしき格好をした者たちも義足であったり、義眼にサイコスコープが装着されていたりと最早人間とは言いがたい者までいる。

そう、彼等はミュータントである。

先の暴発的なウィルス事故により、感染した人間は身体の1部を諦めるか、かろうじて生き残った人間も何かしらの後遺症が残り、そこから産み出た多くの子供たちは奇形を越えた「ミュータント」として生まれた。
大惨事にかろうじて生き残ったアジアや世界中の人間を世界は感染者や難民扱いをし、多少なりとも国民として保護をしていたが、彼等の子がミュータントとして生まれ出ずると社会は豹変した。

食物の風評被害、普通の人間との結婚による弊害、人間たる浅ましき思いの全てが彼等を迫害、そして見た目では分からない者まで差別するような空気が生まれた。

そこで地球政府の始まりであった世界連邦はそれらミュータントと思われる者と生き残った人間をいっしょくたんに宇宙に上げてしまおうという政策へとと進んだわけである。

さらにその発想から生まれた宇宙移住後の民は世界連邦の保護下にあることから宇宙に上がっても感染者・難民扱いで参政権も自治権も与えられていなかった

当然だがそれは不満を生んだ。

彼等が感染したのはアジアの小国のウィルスのせいだ。なのに、世界中の国はそれらのワクチンやさらなる病原体の恐怖をビジネスに変えた。戦争ビジネスは核兵器からウィルスとワクチンビジネスに取って変わられた。その中で感染者と弱者は国を奪われ宇宙に上げられ、コロニーに閉じ込められ、ただ生きることだけ強制されすべてを奪われた。被害者であるのに国民である権利はおろか地球人としても扱われなくなり、ただ地球のために生かされているのであればその感情は当たり前かもしれない。

そして異形のなった肉体や、重力下では耐えられないその肉体が宇宙で馴染んでしまったというのも彼等にとっては皮肉だった。

〈宇宙に棄てられ、宇宙でしか生きられない身体・・・〉

それはいつしか憎しみとなり、怨恨となり、反地球政府となり諸悪の根源となるのは仕方が無いことかもしれなかった。


 

広大と思えるスペースコロニーでの彼等ミュータントによる秘密裏に行なわれる軍備増強も「ムンゾ」を管理する側と、やはり癒着や贈収賄あって可能とさせる。

地球から最も遠いスペースコロニー「ムンゾ」は、地球に対し月の裏側のコロニー軍の中でも最も遠い位置にあり、地球の周囲を回る月に対してほぼ直角に円をなして周っている。
その周期に対し火星へ最も近いのがムンゾであり、火星と木星の間にあるケレス(小惑星帯)での鉱物資源の採取が地球の新たな価値であり、それはゴールドより価値があるとされた。

ヒロ・コバヤシ博士によって宇宙で発見されたヒロデインという新たな鉱物から成るヒロディーン粒子と、20世紀後半から21世紀に本格開発された「小ブラックホール・エネルギー」は、地球のあらゆるエネルギー問題を解決したが、それは新たな資源を手に入れる戦争への火種となった。

さらに宇宙に棄てられた怨恨を持ちながらそれら巨大な新資源を利用して武装するムンゾのスペースノイドと、他のコロニーから新天地を目指した少数派の人類はジュピトリアン(木星人)となり、その新鉱物を地球にもムンゾにも資源提供をしたのである。それは終わったかと思われた戦争ビジネスの再来となった。
人間は永遠に軍備を増強し、奪い合う生き物なのかもしれない・・・。

(つづく)

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